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2008/01/30

青の一夜~夜行列車に寄せて~

 先日、職場に2月号の時刻表が配架されました。表紙には「3月ダイヤ改正」の文字。ページを開くと、この3月の改正で消え行く夜行寝台列車「なは」「あかつき」「銀河」の特集がされていました。来年の春改正でさらに寝台特急の縮小が予定されていること、特に「なは」は、思いつく限り僕が一番最初に乗ったいわゆる「ブルートレイン」で、その分残念に思う気持ちが強いです。

 そんな縮減の一途をたどる夜行列車ですが、不思議なことに、個人的には車内での出来事などが強く印象に残っていることが多いです。そういう意味で、僕の中で夜行列車というのは、案外大きな存在だったりするのです。そこで、これから数回に分けて、その出来事や出会い通り過ぎていった人たちのことについて、思いつくままつづっていこうかなと思っています。今回は記念すべき?その第1回。

・・・

◆その1.1999年7月16日 上り寝台急行「銀河」号
 今から9年前、事あるごとに夜行列車に乗っていた時期があった。無論好きだということもあったがまだ20代と若く、体力的にも自信があったからだと思う。暑かったので車内の冷房が心地よかったことをよく覚えている。この日乗ったのはA寝台。手元のメモには乗車6名との記載がある。夜行バスの台頭で、乗客減に拍車がかかりつつあった時期だったのかもしれない。

 「銀河」のA寝台車には、一角に談話室のようなものがある。車掌室の向かいにあり、ボックスシートで4人座れるように作られてあった。A寝台でタバコが吸えるのはここだけだったので、自分の寝台に荷物を置いて一息ついてから、ここで煙草を吸っていた。

 米原あたり、だったと思う。一人の男性がやってきた。見た感じは30代半ばくらい、どこにでも居るような、ごく普通な感じの人だった。お互い手持ち無沙汰ということもあり、どっちからともなく、「どちらまで?」という切り出しで話が始まった。大阪へ遊びに来、これから東京へ帰るところだという。趣味で声楽をやっているという話を聞き、慌てて煙草を消したことを思い出す。

 ありきたりな日常会話をしばらくした後、僕が東京に何をしにいくのかという話から、身の上話のような話になった。話しやすい人だったし、当時自分の身の振りようで悩んでいたこともあってか(折に触れて書くかもしれませんが)、僕は「どう思います?もし同じ立場だったら、どうします?」と、悩んでいたことをほとんどすべて、話してしまったように思う。

 「うーんそうだなあ…」と、彼はしばらく悩んだ後、自分だったらこうするよ、と答え、「でもね、大事なのは『どうすればベストなのか』ということではなくて、『自分がどうしたいのか』ということだと思うよ。人生は一度きりだし悔いのないように」と付け加えた。その一言が、強く印象に残った。結果的には自分の思うようにはならなかったし、そうできなかったけど、その後の自分の行動に、この人のこの言葉が多少なりとも影響したように思う。

 時間にして2時間弱。互いの名前も知らない。疑ってかかれば、言っていることがすべて嘘だとも考えられなくもない。以後この人に会うことは今のところないし、今後もないと思う。それは当然解っていた。大事な相談なら信頼できる友人にすればいいのに、どうしてそんな話をしたのか…。最大の理由は、『しがらみのなさ』かもしれない。お互い誰だか知らない、でも閉鎖された空間で長時間を共有している。そしてそれ以後はお互い会うことはない。そんな一時的な、かつ特殊な関係がそうさせたんじゃないかと、今思うと、そんな気がする。

 きっかけは大抵、「長い間顔を突き合わせているのだし、まあ退屈しのぎにしょうもない話でも…」という場合が多い。でも個人的な経験では、何故か深い話を聞くことになることが多いし、することも多い。『しがらみのなさ』に加え、非日常的な空間も、それを助長させているのかもしれない。夜行列車は、そういった独特の空気を乗せて、今宵もどこかを走っている。

◆寝台急行「銀河」
 東海道線東京-大阪間を走る寝台急行。1949(昭和24)年に東京神戸間の夜行急行として運転が開始される。現行の車両で運転されるようになったのは1986(昭和61)年から。最終の新幹線より遅い時間に出発し、翌日の始発の新幹線より早い時間に到着することから、ビジネス客を中心に人気があったが、夜行バスや貸切りバスツアーの充実に押され、利用客が減少。ゆっくり寝て移動したいという人や家族連れなどに安定した人気があったが、2008(平成20)年3月、廃止予定。

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