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2010/09/16

大阪のおっさん、黒部で死ぬ思いする。(2)

 昨日からの続きです。

◆9月6日(月)後半
 12:28 しばらく休憩ののち、なかなかに去りがたい心境だったのですが、ぼちぼちと帰り始めることに。それにしても、大太鼓、すごいところです。クセになってしまうかも…。太鼓持ちは大嫌いですが、大太鼓は結構好きかもsweat01

P1000498

 実はこの大太鼓付近、非常に危険なのですが、自分でも帰ってきて驚くのですが動画を撮ってました。

 そもそも、長時間普段は歩かない環境を歩き、高度に関する感覚がマヒしているところに、更にカメラのモニターを覗くと、恐ろしいほどに距離感が失われるんです。そのためにこんなところをひょいひょい歩きながら動画が撮れたのだと思いますが、慣れてないと非常に危ない行為だと思います。公開しておいてアレですが、真似はしないようにお願いします。

 さてぼちぼちと戻り始めますが、戻り始めて気がついたこと。行きとちょっと感覚が違うんですね。それは壁になる岩が左側で、左手でワイヤーを持つようになったこと。行きは逆になるので、ワイヤーは右手で持ってました。右利きなんで、持ちやすかったんですよ。帰りは逆。何となく違和感があります。これは気をつけないといけませんね…。

 大太鼓を過ぎてしばらく歩くと、分岐がありました。

P1000518

 右へものすごい勢いで下って行っているのが志合谷に下りる作業用通路です。興味惹かれますが、業務用かもしれませんし、欅平並みの高低差を再度上り下りするのは、やっぱり気がひけますsad

 更にしばらく歩くと、志合谷の雪渓を一望できるところがありました。

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 これ、写真だと今一つ大きさが分からないのですが、もの凄く大きいんですよね。

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 その雪渓を、水平歩道はトンネルでくぐっている様子がよくわかる1枚。雪渓のところだけ、真横に走る線が切れているのが分かるかと思います。そのトンネルを再びくぐり、出口へ。トンネル内は1本の丸太が置かれていますが、それに乗らないと靴がずぶ濡れになるほど程度の深さの水が溜まってます。トレッキングシューズを履いてきて本当に良かったですわ、ていうかこんな道歩くんだから、普通は履きますよねcoldsweats01

 欅平側の出口には、そのトンネル内から流れ出る水が谷に流れ落ちる、湧水があります。これが冷たくって本当においしい!!水がこれほどおいしいと思ったの、久しぶりです。汗だくの体に染みわたります。しばし立ち止まり、谷に残る雪を眺めながら一息つきます、ってさっきからひといきつきっぱなしですがsweat02

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 行きに飲み干したお茶のペットボトルに水を入れ、私製「黒部のおいしい水」happy01

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 谷にごろりと落ちている、雪の塊。これも分かりづらいかもしれませんが、左側の塊で大人の身長くらいの高さがあります。こうやってみると、その迫力をここで到底お伝えできないのが、本当につらいですね。

 さらに道を戻ることしばし。志合谷の入口付近の山腹に、、何やら人工的な構造物が。

P1000538

 茶色になってしまっていて、少し見づらいのですが、お分かりいただけますでしょうか。これは志合の横坑口なんです。このトンネルの先には、上部軌道が通る本坑があるはずです。ここは現在も点検用入口として機能しており、さきほど分岐した、下へ降りる道がここへつながっているのでしょう。前にも少し触れましたが、以前はこのすぐ横にトンネル掘削のために集められた作業員のための宿舎がありました。鉄筋コンクリ2階建て、3階以上は木造の4階建ての立派な建物だったそうです。よーく目を凝らして見てみましたが、それらしきものは見つけることができませんでした。宿舎は坑口のすぐ近くにあったそうなので、構造物のいびつな形からすると、ひょっとして一部は宿舎の一部分なのかもしれません。

 「高熱隧道」に詳しい記述がありますが、黒部では「泡(ほう)雪崩」と呼ばれる、急峻な山にだけ発生する雪崩が起きる地域です。それは周辺の空気を巻き込み、猛烈な破壊力を持って山肌を駆け下り、進路に存在するものをことごとく破壊するという、非常に恐ろしい雪崩です。電源開発盛んな頃、ここ志合谷でその泡雪崩が発生し、その宿舎が被害に遭い、建物ごと根こそぎ雪崩に運ばれながら、600m先の対岸にそびえる奥鐘山の山腹に激突し、当時宿舎内で就寝中だった、84名もの作業員の方が犠牲になるという、非常に痛ましい事故があったところなのです。そのような事故があったすぐそばに自分が居るのと、小説の舞台の只中に自分が居る、という思いが、複雑に交差しました。このほかにも阿曽原谷で28人の雪崩による被害者、そしてトンネル工事全体では300余名もの犠牲者を出しています。これは同時期に開通した丹那トンネルの犠牲者よりはるかに多いもので、当時の電力不足解消という国家的要請があっとはいえ、如何に無謀な工事であったかを物語っています。一礼して、その場を離れました。

 とことこと歩いていると、行きと風景が違うことに気づかされる場所が、少なからずあります。後ろを振り向かずに歩いていたこともあるでしょうけれども、この違いが案外面白い。

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 緑濃い中に、ぱっくりと開いて見える遠い地上…。

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 桟道です。桟道なので、下は何もありません。行きは見えなかったですが、こんなところ歩いてたんですね。そしてこれから、通ることになるんですねbearing

 帰りがけは時間的にこれからすれ違う人は少ないだろうなあと思っていましたが、1人すれ違いました。比較的広いところでしたのでどちらも下がらずにすみましたが、交換するときは慎重さを要求されますね。

 黙々と歩くことしばし…。

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 14:30 欅平上部到着。水平歩道の終点です。ここからは山道を下るだけ、引き続き慎重さは要求されますけど、道幅を気にしなくていいぶん、気は楽です。「ぶーん」と低いうなりを上げる高圧鉄塔の下で、10分ほど休憩ののち、欅平駅を目指します。

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 木々の間に大きく見える欅平駅。この瞬間「ああ、帰ってきた」と思いましたよcatface美しい風景ばかりでしたが、やはりそれなりの緊張はしていたようです。そして…。

 15:25 欅平到着。総歩行距離は、約10.7kmでした。とても登山とはいえない距離ですね…。

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 山を下りてきて眺める駅舎は格別で、行きの時とは違って見えました。

 …と、ここまでご覧になって「行きたい!」と思われた方(いるのかな?)のために、ワタクシが行って気付いたこと、用意したものなどをご紹介いたします。ご参考までに…。

●水平歩道部分は確かに歩きやすく、登山の書籍などでは中級として紹介されているものもあり、私のような初心者でも行けないことはないですが、道の存在する場所は特殊で、やはり相当な危険は伴います。事実、水平歩道を含む「下ノ廊下」と呼ばれる部分では、毎年数名の転落者が出ています。歩きやすい道ですが、極端な話、そこに「生きて帰ってこれる」という絶対的な保証はどこにもありません。行かれる際は、あくまで自己責任でお願いします。

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●私もそうでしたし、すれ違った方も単独登山が多かったのですが、万が一の時のことを考え、出来るだけグループで行かれたほうがよいと思います。

●登山です。登山カード、登山の届け出をしておいたほうが絶対いいです。家の方にも一言伝えるのをお忘れなく。

●肩幅より広い荷物、頭より背の高い荷物はかなり危険です。幕営を予定されている方にとっては難しい部分もあると思いますが、すれ違う方のためにも、省荷物であるのに過ぎたことはないと思います。

●クマよけの鈴、懐中電灯(志合谷トンネル通過対策)はグループにひとつは必要です。

 …こんな感じでしょうか。それなりの覚悟を決めていただいて、楽しい登山を!

 でもって、ワタクシの旅の続きですがsweat01駅前でしばらく休憩したのち、トロッコ電車で帰ることに。駅前広場から階段で足湯などがあるところに行けたり、猿飛峡をはじめ駅周辺にも観光スポットはあるのですが、疲れてしまい、とても行く気にはなれませんでした。駅でそばを食べましたが、この時に食べたそばの味、一生忘れないような気がします。

 しかしこれだけ疲れてても鉄分は衰えずsweat02動画はしっかり撮ってましたsweat01根っから鉄道好きな自分に呆れます…。

 ここからはおとなしく今日の宿泊地・魚津に移動しますが、トロッコ列車の車内は最終間近とあって、平日にしては混んでいるほうでした。ちうことで、周囲の多くが欅平周辺散策の観光客、その中にひとり泥まみれで汗だくのきちゃないおっさん…相当浮いていたことでしょうhappy01

 19時ころ、ホテルに無事チェックイン。筋肉痛が心配ですが、まあ、なんとかなるでしょう。薬が名産の富山、折角なので富山らしい画像を一枚。

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 長年訪問したかった水平歩道。今回それが実現したわけですが、いろいろと行く前には悩みましたけど、個人的には行ってみて良かった、と思いましたよ。季節的にも、年齢的にも、今しか行けないでしょうし…。今回の旅は、一生の思い出に残る旅になりそうです。 

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コメント

 うわぁ、これはとても素晴らしそうな登山道ですね! 是非行ってみたい!

 …と思ったのは、写真では、登山道がある場所の地形の険しさが、よく分からないからです…。coldsweats01
 高所恐怖症の私には結局、一生、縁がなさそうな気がします…。shock

投稿: ゴエン | 2010/09/24 23:17

 あと、水は飲まれたんですねsign01 おめでとうございますsign03(?)
 本当に、あの地で飲む水は天下一品ですよね。

投稿: ゴエン | 2010/09/24 23:20

 そうなんですよねえ、写真ではこの恐ろしい迫力(笑)が今ひとつ伝わらないかもしれません。現場で撮っていても、モニターに写る画像は、あたりまえですがものすごく平板に見えるんですよね…。あと崖地で引きがなく、全体が撮りにくい、というのも、より分からなくなってしまった原因かと思います。あと、存在箇所が一般生活から想像できる範疇を越えている…というのもあるかもしれません。高さは、慣れますよ、恐ろしいことにcoldsweats02

 それから、水は本当においしかったです。おかわりしました。

投稿: Yokochan | 2010/09/25 19:41

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